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山陽新聞夕刊『一日一題』連載第6回(全7回)
2015年11月16日


先月半ばから、玉島にトルコ人写真家セルカン・ヘキムジさんを迎えている。新旧の地域写真をアーカイブするプロジェクトの一環で、プロの目線によって現在の町の姿を撮影し、残していくのが狙いだ。

いわゆるアーティストインレジデンス(略してAIR)と呼ばれる短期滞在型制作活動で、今年度は笠岡・玉島・高梁で開催された「備中アートブリッジ」のAIRとして実現した。どの地区でもアーティストが一定期間暮らし、まったくの旅行者でもなく、と言って生活者でもなく、その間を行ったり来たりしながら思索を深めた作品を各地で発表している。
10月最後の日曜日、まだ真っ暗な午前4時、乙島祭りの撮影に出かけると言うセルカンさんに同行した。きらびやかな千歳楽が戸島神社の長い石段を練り登り、お宮の前で担ぎ手一同揃い踏みとなる勇壮な祭りは、倉敷市の重要無形民俗文化財でもある。数年前に一度訪れたことはあったが、朝早くからあんなに大勢の見物客がいるとは知らなかった。
祭りの喧騒の中、いつどこにいても旅行者の眼でいられたらどんなにいいだろう、と思った。何を見てもすべて新鮮で、朝日ひとつに心が動き、いましか体験できないと思えば早起きも出来てしまう。と同時に、生活者として一つの場所に根を下ろし、ルーティンワークを繰り返す日常にも、尊く美しい朝は訪れているのだな、毎日、とも思った。祭りも佳境、夜明けとともにのぼってきた船型の山車を見ながら、境内に一瞬大きな海原が現れた。その時私の眼には、そう見えたような気がした。
セルカンさんは、今回が初めての日本。1か月間に渡って、新鮮な眼で撮り続けた写真の展覧会は、この週末21日から始まる予定だ。是非多くの方に見てもらいたい。

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