drifts at the mercy of the waves

 

(写真:2017年の東京造形大学グループ展より)

 昨年の暮れまでのおよそ10年、親戚が運営するアートギャラリーを手伝っていた。はじめた頃、私は県外から玉島地区へ引越してきて数年経っていたものの、まだ夫の家族以外に知り合いも少ない時期だった。大抵のギャラリーがそうであるように、芳名帳を広げた机の奥で、スタッフはひっそり店番をしている。町場のそれと違うことがあるとすれば、展覧会のたび、ご近所の人がふとのぞいていくということだろうか。古民家を改装したギャラリーは、神社のふもとの一方通行の道に面した分かりにくい場所にありながら、入ってしまえば坪庭の見える静かで気持ちのよいところだった。近くの商店街から仕事を抜けて来た人が、黙って作品の前に佇むのをぼんやり見たり、少し世間話をしたりした。

 会うと約束している訳ではないけれど、そこに居れば会うこともある。ある人とある人の時間が、ある作品の前で偶然に交錯して生まれるやり取り。くり返す日常の波間で、次の波がやって来るまでの一瞬の絶え間に、お互い顔を見合わせて息継ぎするような、そんな時間だったと思い返している。



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