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タイトルの「たまずさ(玉梓)」は手紙や消息をあらわす古語。大切な友人が営むウェブ雑貨店が発信していたオウンドメディアに書き下ろした、いくつかの文章を、ここに転載する。(※ウェブサイトは2025年にclose)友人が一つ一つ吟味してオンラインで販売していたのは、岡山県の風土の中で生まれた手仕事の品々だった。作品と言えるそれらに、そのもの以上の言葉など、本当は必要なかったのかもしれない。そう思いながらただ、そのものの存在へのラブレターのつもりで、私は記事を書いた。2022年、新型コロナウイルス感染症が五類感染症に移行する前の年の、春から秋にかけての記録とも言える。



陶の花器のための詩 2022年6月


”民の戸を まもるや世々の 羽黒山
かげしく海の ふかきちかひに”
澄月

(拙訳)
羽黒山はこの地に住む人々を代々きっと守っているだろう
その山影(=お蔭)を広く映す海ほどに深い誓いを立てたのだから

澄月は、1700年代に備中国玉島に生まれた歌人です。
羽黒山の景色を詠んだこの歌は、神社参道にある石碑に刻まれています。

「澄月の和歌によせて」

凹であり凸である
凹でなく凸でない
有ることと無いことを
同時に生きる
量子の海で

うつろになる
わたしの胸を
風吹き抜ける
それでも祈れと

いま誓う
社の深い影のもと
生きると

霧散するその海が
どれほど果てしなくとも


「Quantum Sea: Beneath Haguro’s Shadow」

A hollow and a rise
Not hollow, not rise
To live both presence and absence
As both wave and particle—
A crest and a void
In the quantum sea

My chest turns empty
As wind flows through
Still, it calls—pray
Now I vow
Beneath the shrine’s shadowed grace
To live

Though the sea
May vanish into mist
Endless as it is